大判例

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宮崎地方裁判所 昭和42年(行ウ)6号 判決 1969年2月10日

原告

長住正哉

外九名

被告

日南市公平委員会

主文

被告が原告らに対して昭和四二年六月二二日なした不利益処分の審査請求却下の各決定はこれを取り消す。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実(編注・上欄下欄主張等が対比されている)

<省略>

(原告らの求める裁判) 主文同旨  (原告らの主張及び答弁) 一、原告らはいずれも訴外日南市事務吏員たるところ昭和四一年一二月二七日訴外日南市長井戸川一より別紙目録処分内容欄記載のとおりの各行政処分を受けた。 二、そこで原告らは、右各処分を不服として昭和四二年一月二八日被告に対し公開口頭審理方式による不利益処分審査請求の申立をなしたところ、被告は同年六月二二日付をもつて原告らの審査請求の申立をいずれも却下する旨の決定をなし、そのころ   (被告らの求める裁判) 一、原告らの請求を棄却する。 二、訴訟費用は原告らの負担とする。  (被告の主張及び答弁) 一、認める。 二、認める。

<省略>

原告らにその旨通知した。 三、認める。 四、然し被告のなした右決定には以下に述べる重大な違法があり取り消しを免れないものである。  1 被告は原告らが本件各審査請求事件において争議行為をしたことを自認し少くとも審査請求書のみの審査によりこれが認定できる旨主張するのであるが、原告らはこれを自認しておらず、また審査請求書のみの審査によりこれを認めることもできずしかも争議行為をしても直ちに審査請求権を失うものではないから、これを失つたとして却下の決定をしたのは違法である。   (イ) 原告らは争議行為をしたことを自認していない。   原告らの審査請求書中に被告主張「 」内の記載のあることは認めるが原告らは同請求書中で更に「今回発表された処分内容をみると年休者、出張者及び統一行動に参加していないものに対して処分を行ない・・その内容たるや事実誤認も甚だしい」と主張しているのであつて審査請求書全体の趣旨から原告らが職場集会に参加したことも争つており、更に、右集会が地方公務員法(以下地公法という)第三七条第一項に該当する事実であるということは全く認めていない。 三、原告らに対する処分者側の懲戒処分理由は「昭和四一年一〇月二一日午前八時三〇分から一時間原告らが争議行為に参加した事実は地公法第三七条に違反するとする」ものであつた。 四、以下のとおり本件決定には瑕疵がなく適法である。  1 原告らが左記のとおり、本件各審査請求事件において争議行為をなしたことを自認しており、少くとも審査請求書のみの審査によりこれが認定できるので、原告らは審査請求権を失つたものであるから被告は却下の決定をしたものである。   (イ) 被告は日南市職員の不利益処分についての不服申立に関する規則(昭和二六年公平委員会規則第三号(以下委員会規則という))第六条第一項により受理すべきか否かを慎重に調査したが原告らの審査請求書によれば「昭和四一年一〇月二一日に実施した一時間の職場集会は、総評、公務員共闘の全国的な統一行動として実施したものである」との主張が記載され原告らは審査請求書自体において、地公法第三七条違反の事実たる勤務時間内の職場集会参加の事実を自認しているものである。

<省略>

(ロ) 地公法第三七条第二項によつても審査請求権を失うものではない。地公法第三七条は公務員につき憲法上の権利である労働基本権を制限するものであり違憲の疑いさえあるのであつて右規定は厳格に解釈しその違反の有無については慎重に審理すべきであるのに本件は全く審理もなされず証拠に基づかず一方的に認定がなされている。  2 審理手続違反   本件裁決の審査方式としては、被処分者から公開及び口頭審理の請求ある場合であるから必ず公開口頭審理によるべきであるのに全く右方式によつていない。そればかりか決定に至るまで全く審理期日、場所の指定通知もなされず被処分者から答弁書の提出を求めることもなく、当事者双方の主張、立証の機会を一切与えることなく一方的に決定がなされている。   これは地公法第五〇条委員会規則第九条各項、第八条第六項ないし第九項、第一一項、第一二項に反するものである。  3 審理不尽ないし理由不備   本件決定の却下事由たる職場離脱行為に原告らが参加したか否か、仮りに原告らが参加したとしてもその行為が地公法第三七条第一項にいう争議行為に該当するか否かについて被   (ロ) 地公法第三七条第二項によれば、同条第一項違反者は公務員が任命され雇用されていることに基づき有している一切の権利を主張し得なく、従つて不利益処分についての審査請求権も認められない。本件審査請求は、地公法第三七条第一項違反行為の存在について当事者間に争いがないが、少くとも審査請求書の記載事項より明らかに認められ、その余の点につき具体的証拠資料により判断するまでもなく、地公法第三七条第二項、委員会規則第六条により却下すべきものである。  2 原告ら主張の手続によつていない事実は認めるが、その余は争う。本件は上記手続規定の適用のない場合である。すなわち、本件は前記のとおり原告ら提出の審査請求書の内容自体より明らかに不適法として請求を却下し得る場合であり実質審理をなす必要はなく、原告ら主張の実質審理をなす際の手続規定は何れも本件については適用の余地なきものである。  3 当事者の証拠として提出した資料に基づかずに却下事由を認定したことは認めるがその余は争う。   審査請求書の記載事項自体において請求が不適法なことが判定し得る場合には当事者の攻撃防禦の対象となつた資料に

<省略>

告は全く証拠、資料に基づかないで一方的に認定しており少くとも原告らの主張、立証の対象として攻撃、防禦の機会を与えない資料に基づき独断的、一方的に認定をなしており右は明らかに事実認定についての審理不尽ないし理由不備にあたる。  4 公平審理に関する規定は公務員の労働三権制限に対する代償措置であり公平委員会が中立機関として争訟手続により当事者双方にその主張、立証を十分尽させたうえでその結果に基づき適正公平な判断をなし、不当に公務員の利益が侵されないようにするための手続的保障規定であつて厳格に適用さるべきものであり、前記各規定違反及び審理不尽、理由不備は本件決定の重大な瑕疵である。  (原告らの証拠関係) 甲第一号証、第二号証を提出。 乙号証原本の存在と成立を認める。 原本に代え写しの提出に異議ない。 よらなくても不適法を認定し請求を却下し得る。  4 本件決定に瑕疵ありとの点は争う。  (被告の証拠関係) 乙第一号証提出 甲号各証原本の存在と成立を認める。 原本に代え写しの提出に異議ない。

理由

一、原告らはいずれも訴外日南市に事務吏員として勤務していたものであるが、昭和四一年一二月二七日同市市長井戸川一より「昭和四一年一〇月二一日午前八時三〇分から一時間原告らが争議行為に参加した事実は地公法第三七条に違反する」との理由で別紙目録処分内容欄記載のとおりの各行政処分を受けたことそこで原告らは昭和四二年一月一八日右各行政処分を不服として不利益処分審査請求の申立を被告になすとともに右各申立につき公開による口頭審理を請求していたこと、これに対して被告は全く期日の指定や公開口頭審理を行わず被処分者たる原告ら及び処分者の当事者双方に主張、立証の機会を与えることなく同年六月二二日原告らの審査請求の申立をいずれも却下する旨の決定をなし、その頃その旨を原告らに対し通知したことは当事者間に争いがない。

二、先ず本件審査請求却下の手続の適法性について

この点に関しては地公法第八条第七項及び同法第五一条によりその手続は委員会規則で定められるところ、委員会規則第六条各項によれば、審査請求書が提出されたときは、その記載事項、添付書類、並びに処分の内容等について調査し審査請求を受理すべきか却下すべきかを決定しなければならない旨定められている。従つて、右規定によれば審査請求書の記載事項、添付書類、処分内容等を調査することにより補正できない審査請求の要件の欠陥が直ちに認められる場合には右調査のみで審査請求却下の決定をなすことができるが同調査によるも右要件の欠陥が直ちに認められない場合には、処分を受けた職員から請求があれば地公法第五〇条、委員会規則第九条所定の公開口頭審理に関する手続に則り請求にかかる事案の審理を要するものと解される。

これを本件についてみるに、原告らに地公法第三七条第一項違反の事実が存在するかについては、被告は原告ら提出の審査請求書の記載自体よりその存在が自明の場合であると主張するが、原告ら提出の審査請求書に「昭和四一年一〇月二一日に実施した一時間の職場集会は総評、公務員共闘の全国的な統一行動として実施したものである。」との記載がなされていることは当事者間に争いがないとはいえ、成立に争いのない甲第一号証によると同審査請求書には、右記載の後、更に「今回発表された処分内容をみると年休者、出張者及び統一行動に参加していない者に対して賃金カットと処分を行なう・・・等その内容たるや事実誤認もはなはだしいものであります。これらの問題について市長と労働組合との間で数回にわたり、団体交渉を行ないその中で事実確認書を要求してきたが当局はこれを拒否してきています。以上のとおりの事由に基づき事実確認の内容が明白でなく、不当処分として不服を申立てるものであります。」との記載がなされている事実が認められる。したがつて、右審査請求書の各記載において原告らは、右日時に職場集会の行なわれた事実についてはこれを認めているものの、同人らが右職場集会に参加したこと、又仮りに原告らがそれに参加したとしてもそれが直ちに地公法第三七条所定の争議行為に該当し従つて同条違反の責任を負うべきことについて、これを自ら認めているとは到底判断できないのみならず、客観的にも同審査請求書の記載事項を精査すると、審査請求の理由として同四一年一〇月二一日実施の職場集回のもたれた原因目的及び方法を説明するとともに被処分者中には右職場集会に参加していないものも合されていること及び同職場集会参加者についても処分のなされた者とそうでない者があり不公正な取扱がなされていること等を述べているにすぎないものであり、同請求書の記載から直ちに原告らに地公法第三七条第一項違反事実が存することを認めることはできない事実であるといわざるを得ない。

地公法第三七条第二項の解釈については問題のあるところであるが、同条第一項違反行為をしたもの未だ同法第三条第八節第四款に定める審査請求権を失わない趣旨と解釈すれば勿論、仮にこれが被告主張のとおり右違反行為をしたものは右審査請求権を失う趣旨を定めたものと解釈しても、本件は右のとおり原告らが審査請求書において右条項違反行為を自認しているとはいえず、またこの事実が同請求書記載事項、添付書類から認めることはできないのであるから、直ちに却下できず、この点につき更に審理を要し、なおその審理については、原告らから公開口頭審理の請求がなされているのであるから、地公法第五〇条、委員会規則第九条各項所定の手続、すなわち、公開口頭審理により期日指定をなし、当事者双方の主張、立証の機会を与える等の手続により審理を行なう必要があるものといわなければならない。

三、従つて、直ちに原告らに被告に対する審査請求権がないとして、公開口頭審理及び審理期日の指定をしなかつたことは勿論、当事者双方に何ら主張、立証の機会を与えることなく被告が原告らの各審査請求を却下した本件決定は、失当として取消しを免れない。

四、よつて、原告らの本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

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